羽と手/木立 悟
 



手のひらのなか揺れる手のひら
波のかけらを抄いあげると
しずくは双つ微笑んで
仲たがいを終えた羽
海の光に照らされて


風は強く
雪をけしてつもらせてはくれない
ひとつひとつ鎖を飛び越え
吹雪またたく砂浜に出る


肌を越え 肌を越え
羽は飛び 羽は飛び
冷気のむこうの音へと昇り
遠く境の色へと至る


午後の霧の手
泡立つ音を見つめつづけて
ひとつの紅い雲となり
遠去かる鼓動のかがやきを聴く


見知らぬ命は波の下に
もうひとつの波のように流れている
人の衣をまとっては
砂浜を歩くこともある
月夜に涙を流しながら
うたを歌
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