「 たまご。 」/PULL.
わたしの殻は。
孵化してすぐに、
わたしが食べてしまったので、
もう残っていない。
孵化する瞬間を父が撮った。
古いピンぼけ写真だけが、
今も残る確かな証拠だ。
でもそれは、
わたしの記憶じゃない。
本当のところは、
どうなのか。
考えると、
いつも不安になる。
わたしは本当に、
卵から生まれたのだろうか?。
そう、
もしかしたら、
わたしは、
どこかから、
あの竹取姫みたいに、
くるまって、
卵の様にくるまって、
棺の中で眠っていると。
わたし、
そうなのかもしれない。
なんて感じたりするのに。
母の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)