「 たまご。 」/PULL.
母のあの口癖が、
頭の中に響く。
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。
あの卵の殻を割って、
あなたの顔が見えたときね。
お母さん。
嬉しくて涙が出たんだから。
お父さんなんて、
おいおい泣いちゃって、
せっかくの写真を、
ピンぼけにしちゃったのよ。
覚えておいて欲しいの。
お母さんも、
お父さんも、
お兄ちゃんも、
みんなみんなみんな。
あなたのことが大好きよ。
約束よ。
これだけは、
なにがあっても忘れないで。」
寝覚めの頭で、
想い出に浸っていると。
ちょうどいい具合に、
お腹がへった。
うん。
そうだね。
少し早いけれど、
ご飯にしよう。
えっと、
冷蔵庫には、
なにが残っていたっけ?。
追伸。
プレーンオムレツを食べながら、
ふと思った。
これは共喰いなのだろうか?。
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