「 たまご。 」/PULL.
る伝説の通りだと。
孵化したわたしは。
角が生えていたり、
翼が生えていたり、
目から光線が出たり、
口から火を噴いたり、
しているはずだったのだ。
ほとぼりが冷めるまでの、
しばらくの間。
わたしの家族は、
隠遁生活を送らねばならなかった。
孵化したばかりで、
まだ幼かったわたしは、
その頃の苦労をなにも知らない。
物心が付いた頃。
不思議そうにわたしを見る、
ご近所さんたちの視線を、
朧気に記憶しているぐらいだ。
本音を言うと。
卵から生まれたと云われても、
実感という奴が、
いまいち湧かないのだ。
確かな物的証拠である、
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