「 たまご。 」/PULL.
中までもが、
こぞってうちに押しかけ、
てんやわんやの大騒ぎになり。
挙げ句の果てには、
その対応に追われた父が、
心労で体調を崩し、
半年も入院してしまった。
「あの時、
お父さんはね。
本当に大変だったんだよ。」
胃を押さえ、
恨めしそうにわたしを見る。
父の潤んだ目が、
いまだに忘れられない。
そんな大騒ぎをした末に、
ようやく生まれ、
孵化したわたしだが。
ほどなく、
なんの変哲もない、
ただの赤子だと判明し。
一族の者たちは酷く落胆した。
彼らは特別な期待を寄せていたのだ。
なにせ、
まことしやかに、
一族に伝わる伝
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