「 たまご。 」/PULL.
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。」
それが母の口癖だった。
嬉しいことがあったときも、
悲しいことがあったときも、
大喧嘩をしたときも、
仲直りをするときも、
母はそう言って、
さめざめと泣くのだ。
色々と特別なことが多い、
我が一族でも。
卵で生まれる者は、
ごくまれらしい。
長老が云うには。
数百年にひとり、
生まれるか生まれないか、
なのだそうだ。
だから、
わたしが生まれる際には、
一族中が大騒ぎだった。
聞いたこともない、
遠い親戚連中ま
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