列車/アシタバ
 
たはずだとも思う
 ポケットを探ると
 出てきたのは折れ曲がり赤く錆びた釘が数本
 一本だけ手元に残し
 残りは窓から投げ捨てた
 たったそれだけの動作で
 ぐったりと疲れてしまった
 そのまま眠りそうになった
 しかし何とか自分を奮い立たせて
 窓から抜け出そうと見もがいて
 上体が車外に出たところで
 気が付いた
 列車は動いてはいなかった
 異様な数の人が
 みな一様に襤褸をまとって
 長い列をつくり
 黙々と歩いていた
 その列に加わるべきか躊躇はしたが
 私は列車から滑り出て
 彼らとともに歩き始めた
 隣を
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