首吊り族の死に方とその歌/岡部淳太郎
 
て大地にも知恵をつけてもらうためである

知恵は土の中で大地に栄養を与えているが
知恵から切り離された残りの部分はどうなるか
もちろん放り捨てられて腐るに任せるが
その臭気でさえも人びとの生活にある彩りを与える
野の獣が肉をついばむだろう
虫や微生物が死を全体に還元するために群らがるだろう
そうして遺体の肉が完全に取り去られた時
人びとはおもむろに動き出す
完遂した死のもとに赴きその骨を持ち帰る
骨は綺麗に洗われ 彼等の生活の道具へと加工される
生活で汚れた身体だから
生活のために奉仕させるのがふさわしい

彼等が首吊りという死に方を選ぶ理由
そのすべては人の知恵か
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