首吊り族の死に方とその歌/岡部淳太郎
 
はおもむろに動き出す
遺体を吊るされた状態から解放し
頭部だけが切り離されて埋められる
その他の部分は地表に横たえて
人びとの視線から自由にされる
南の大地は熱い
重たい空気の中で腐敗は加速する

吊られた身体を一定期間そのままに保つのは
故人が生きていた時に蓄えていた生活の毒をぬくためである
毒ぬきが済み
無垢な死へぎりぎりまで近づいた身体
だが人の知恵の源である頭部だけは死してなお生きている
知恵は最後まで残り
脳の中でいつまでもざわめいている
人が人である証し
万物の霊長である理由を担う頭部
それのみを切り離して大地の奥深く埋める
これは人の知恵によって大
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