ネリリしたりハララしたり/佐々宝砂
 
も鬱々になって、ネリリしたりハララしたりしたいなと思う。

火星の人類学者は、どんなに鬱になってもリストカットしたり人を憎んだりはしない。そんなことするだけの愛憎の激しさをもちあわせていない。その手のことが根本的にわからないのだ。わからないなあ、人間として私にはやはり欠陥があるのかしらと思うと、火星の人類学者はよけいに鬱々として、またネリリしたりハララしたりしたいなと思う。

でも、ネリリしたりハララしたりって、いったいなんだろ?

谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」にそんな言葉があったかしらと思って、火星の人類学者は自分の記憶を探る。「ネリリ」や「ハララ」じゃなくて他の言葉でもいいのだ
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