ネリリしたりハララしたり/佐々宝砂
も鬱々になって、ネリリしたりハララしたりしたいなと思う。
火星の人類学者は、どんなに鬱になってもリストカットしたり人を憎んだりはしない。そんなことするだけの愛憎の激しさをもちあわせていない。その手のことが根本的にわからないのだ。わからないなあ、人間として私にはやはり欠陥があるのかしらと思うと、火星の人類学者はよけいに鬱々として、またネリリしたりハララしたりしたいなと思う。
でも、ネリリしたりハララしたりって、いったいなんだろ?
谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」にそんな言葉があったかしらと思って、火星の人類学者は自分の記憶を探る。「ネリリ」や「ハララ」じゃなくて他の言葉でもいいのだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)