詩人の墓前に祈る 〜北鎌倉・東慶寺にて〜 /服部 剛
 
感じ、墓石の下に眠る詩人の魂に、言葉にならない感謝の念を
伝えた。そして、詩を愛する者の一人として、詩を書く者の一人と
して、高見順氏がこの世に書き遺した詩の言葉のように、全ての人
の胸の内に一輪の花が咲くことを願う気持が湧いて来るのを感じて
いた。

 「高見順詩集」を閉じて、打ち合わせでT氏に渡す僕の第一詩集
に載せる詩の数編をホチキスで束ねて鞄の中にしまい、もう一度墓
前に手を合わせてから階段を降り、北鎌倉駅前で三時に待ち合わせ
ているT氏を迎えに行った。

 T氏を東慶寺の境内や文人等のお墓に案内すると、T氏も墓前で静
かに合掌していた。その背中の後ろに立つ僕も
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