詩人の墓前に祈る 〜北鎌倉・東慶寺にて〜 /服部 剛
 
違う
  葉陰に鳥がとまっているのか
  なんということはないその枝葉の揺れが
  枝葉末節の揺れが
  はなはだしく私の心を惹く

  (「枝葉末節の揺れ」)

 読んでいた詩集の項から顔を上げると、視線の先には、細い枝先
の葉が、微かに揺れていた。

  うつらうつらとしたひとときに
  楽しい眺めの夢に見た
  見渡すかぎりのすべての草木が
  一本について必ずひとつ宛の花を持っている
  すべての人に必ずひとつの喜びがあるように

  (「一草一花」)

 この短い詩の言葉にふれて、僕の胸に内に一輪の幸福の花が開く
のを感じ
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