詩人の墓前に祈る 〜北鎌倉・東慶寺にて〜 /服部 剛
打ち合わせの日に会うとは奇遇である。きっと目には見えない磁
場のようなものがあるのだろう。
三分ほど歩いて東慶寺の境内に入ると、日の光に照らされた石
畳の道の上には午後の太陽が輝き、僕は境内の奥にある杉木立の
山へと入って行き、故・小林秀雄氏や高見順氏等の墓前にしゃが
み、両手を合わせ、尊敬の念を伝えながら、僕の第一詩集の出版
への想いを祈った。
故・高見順氏の墓前から少し離れた所に並ぶ背もたれの無い椅
子に腰を下ろし、鞄から「高見順詩集」を取り出し、項を開く。
そこだけ
葉が揺れている
風は無く
風で揺れるのと揺れ方が違う
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)