ホットドリンクを買いにゆく。/千月 話子
 
が はしたないと
耳元で「しな」と囁くものだから
新しいお金を出して 本当のお茶を買うのです。


聞いてください。あなた
そんな時 いつも
大事にしていたものを
不意に失くしてしまうのです。


ああ、、今日は、
大切なひと 生まれた年代の
きれいに磨かれた百円硬貨 ひとつ
この手から 離してしまった
悲しい道の先 アスファルト


 アスファルトに高い鉄塔の影落ちて
 垂れた電線の上を爪先立ちで歩く 夕暮れ


私の手のくるみから 暖かさが広がって
さっきまでの鬱々とした塊が
蒸気を上げて空へ上り 消える頃
鉄塔のてっぺんに立つ足を バランス良
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