回想/しらいし いちみ 
 
ら、余りに美味しい
のでまた明日に半分食べると言う。
ニコニコ笑って美味しそうに好物の煮魚を食べる父を見て嬉しかった。


夕食を食べ終わると父は「もう暗くなるから早く帰れ」と言う。
夕方のラッシュと車の運転を心配して必ずそう言った。
私は笑いながら「プロやから大丈夫だよ」と何時も返事した。


エレベーターまで見送りに来るのも何時もの事だった。
もう良いからと断わってもトイレだなどと、言い訳しながら点滴の
瓶をぶら下げて見送ってくれた。


当時はずっと抗がん剤を体に入れなくては為らなかった。
多分辛くても私や見舞いに来た人にはそんな顔見せないで、見送り
してい
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