チューリップ刑罰/黒田康之
が鳴った
きみの靴下と私の靴下は渦巻いたままの形で眠る
さっくりと白身魚を小麦粉に圧す いま私が割れてしまった
あの朝は街がきこきこと鳴るようで古い自転車に乗りたくなった
サニーレタスは冷蔵庫の中でなぜかいつも少しだけ湿ったままだ
愛玩動物は野辺に死んでいるコボレルコボレルコボレル苦しい
百円のキャベツを探しあてた時のあなたのように私は笑む
どこまでも透明であるポスターを貼り付けたままの墓所のある街
ラピスラズリの猫の指輪がどうなってもいい昼間に光る
新しい電子レンジを買いに行き泣き出してしまうきみという女
肉じゃがの糸こんにゃくが長すぎ
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