チューリップ刑罰/黒田康之
 
すぎる謀略という夕餉だろうか

雨も降る劣情もあるこんな夜はきみの下着を干すに限るさ

甘くないケーキを売っている店がいつの間にやら移転していた

電気屋に部屋の電灯を買いに行き大きな箱を抱えて帰る

大学の学生である若者らが飲むチューハイを私も飲む

アルフォンス・ミュシャのポスターを壁に貼りフローリングのキッチンに寝る

落花する すうっと公園の黄色いボート いつもの波紋

真昼間に踵の高い靴を履き鉄の階段をきみは踏み降りる

どうということなどないが私の目にきみの目の入れ墨をする

テーブルも暦も捨ててカーテンの色だけになる 荷造りをする

灰皿に煙草六本驟雨あって茶色い夜がずんずん滲みる

あの時と同じシャツだとふと気づくパン屋の隅で朝日を浴びて

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