チューリップ刑罰/黒田康之
ヴォッカにも似た透明な水を飲むと脳にそのまま沈む太陽
氷河には青い目をした少女などをうずめたのだよ カーテンも青
木の床はきしきしという真っ白なきみの小指はいつも短い
ブルゴーニュの安ワイン開ければ血の匂いして明かりを灯す
愛などという言葉もなくて薄笑いを浮かべたままで買った指輪さ
居酒屋の看板が消えこの街は黒い時間に傾いてゆく
砂粒を見つめる女の身体の緑陰の色ポプラの匂い
パッションフルーツを切り分けて小さな部屋に広がる受難
テーブルに零れるビーズは次々にひかりの小人に拾われてゆく
あたたかな象牙色した背中には陰ひとつない やかんが鳴
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