チューリップ刑罰/黒田康之
人波が流れるままに今日は帰るよ
最終の電車の中は追い越したコンクリート群の風が吹き込む
背の高い女の足が伸び上がり洗ったばかりのジーンズを干す
空は青 あの日のきみはこの空へ伸び上がっていく赤いセーター
きみが作るマドレーヌには香の強いラム酒が徐々に滲み込んでゆく
団地では大きな罅が埋められてその向こうからまた陽が昇る
すずらんは有毒の花落ちてゆくスプーンは途上でちりりと鳴った
ベランダで吐き出す紫煙のその先に隣家の女の下着が揺れる
街路樹は無風を知らせる肉体の温度と同じ陽だまりの道
痛ましく焦げているのが鯖なのでどきどきとして水二杯飲む
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