尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
知ったかぶりの「彼奴あ素人だぜ」野郎には厳しかった喜八さんですが、この瀟洒な若者たちには温かい視線を送っています。名前なんて実際どうだっていいんです。揚げ足を取って喜ぶ例の野郎なんかより、ずっとこっちのほうが愛にあふれている会話なのですから。それにしてもまあなんとこの許婚たちの美しく書かれていることでしょう。独り者としては心中ひそかに嫉妬せざるを得ません。
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「子供と山と」より
{引用=
突然子供が叫ぶ、七歳のコントラルトで、
「モンターニュ!モンターニュ!おとうちゃん。見える、見える!」
(私は彼女のフランス語をそのまま此処に書くことを諸君に許して頂きたい
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