「なんだ、彼奴あ素人だぜ。地図の縁が切ってねえや!」 私はその声の主を見た。若い学生だった。ああ、私。私もまた多くの「くろうと」のように自分の地図の縁を切っていた。特に切断しなければならない必要をも感じないのに。しかしこの学生の軽蔑の一語を聞いて以来、私は喜んで元来の素人に立ちかえり、断じて地図の四辺を切ることをやめた。 p.225