時代/たもつ
列車に乗って
足音のある駅に行こうとしたのだけれど
そんな駅はありません、と
駅員たちは首を横に振るばかりだ
たしかにそうかも知れない
彼らは足音など聞いたことがないのだから
家に帰った私は
辞書で「あしおと」について調べた
その後二時間
やす子と「あしおと」について語り合った
3.
やす子はもういない
私は思い出す
やす子の髪を
その長さを
その色を
その枝毛の数まで
日曜日の暑い朝
足でシーツの冷たいところを探れば
いつもその先には
やす子の冷たいふくらはぎがあった
冷たいふくらはぎのやす子
やす子
やす子
や
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