小詩集「書置き」(九十一〜一〇〇)/たもつ
 
しまうのだろう
外に向かって
私は開かれた窓だが
空の答えをまだ知らない

+

この

呆気も無く
転がっていて
うなじのいやらしい
馬鹿と野郎が


備品なのか
消耗品なのか
さんざん問いただしている
うちに
すっかり
最初から何もないような
シネマを沢山見た後で
刺だらけのサボテンを
君はポケットにしまった

+

公共の宿だった
山間の道をバスで三時間
紅葉の坂道を上ってきたはずなのに
仲居さんの着物の裾は
海岸でセイウチを洗ったかのように濡れていた
もちろんそれはレトリックの話で
仲居さんが本当にセイウチを洗ったのか
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