小詩集「書置き」(九十一〜一〇〇)/たもつ
りなので
まだつかまってる
+
穴の開いた公務員が
左手をその穴に通しながら
僕の書置きを右手で審査している
窓口、とは名ばかりの
窓の無い唇から溢れる言葉は
どれもこれも優しいが
何一つとして救いではないし
とどめでもなかった
手続きは粛々と進み
すべてが終わると
入口と書かれた扉から
僕は外に出されてしまう
+
手足が不自由になって
それから
リモコンも家出をした
隣の部屋では
協会長と事務局長が
言い争ってるのが聞こえる
窓辺ではいつまでも
ホースが絡みついている
+
気がつけば
鳥かごの中には鳥がいる
けれど気が
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