けだものと覆われた子/木立 悟
光の傷の足跡でした
小さくまぶしい姿でした
川はあふれ
流れはくちびるのかたちをして
水と土とを引き寄せるのでした
流れの音は
光の花の緑をしていて
過ぎてきたどこか湿った土地のかけらを
わずかに沈めているのでした
野と林の間には
顔をなにかで覆われた子がいて
うすい香水と
汗のにおいをしていました
なにかは布でできていて
暗がりよりも髪よりも濃く
子は夜に持ち上げられるように立っていました
林のほうへ 野のほうへ
流れは分かれてゆくのでした
葉のかたちの光が触れて
かすかに浮かぶ子のふちどりは
何も身につけていないように
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