夜警/MOJO
私に触れる。私の心中は甘味なもので満ちていた。
そんな断片を書き写そうと、枕の脇に置いておいたメモ帳を広げたが、何も書かず閉じてしまった。すぐに出かけないと神経科の予約した時間に間に合わなくなるのだ。私は洗面もそこそこにデイパックを担ぎ部屋を出て、駅までの道を急ぎ足で歩いた。
寝覚めてすぐに服用した抗うつ剤が効き始めてきたのだろう。休日のプラットホームはとてものどかに感じられた。部活に向かう少女たちの嬌声や赤子をあやす若い母親の声をぼんやり聞くうちに、クリーム色の車両が速度を下げながらホームにすべりこんできた。
車両内は空席が目立つ。デイパックには数冊の文庫本と一冊のハードカバーを入れ
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