夜警/MOJO
かったです」
「短く感じたのなら、あなたは既に瞑想者です。マントラに対して疑念を持たずに唱えたから、二十分があっという間に過ぎたのです」
「言われてみると、目を閉じて二十分じっとしていろ、と命じられたら、苦痛でしょうね」
「マントラの意味を知れば、そこへ意識が向きますから、初めのうちは、意味を知らない方が良いのです」
「分りました、気が向いたら自分で調べてみます」
部屋からでて、大通りを歩きながら、たったいま起きたことを反芻していると、地下鉄の入口から花束を抱えた女がでてきた。私は冷水を浴びたような気がしたが、その女には決して視線を向けずにすれ違った。
こうして私は瞑想者になった。
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