夜警/MOJO
色が静かに流れていた。床も壁もリフォームされてから日が浅いのか、建材や接着剤のにおいが強く残っていた。ソファーに座り、所在なさげにしている私に
「迷わなかったですか?」
コーヒーカップをテーブルに置きながら、男が柔和な表情で話しかけてきた。
「はい、勤め先がここから近所ですから、この辺りはよく知っています」
私は自分の声が必要以上に大きいことに気づいた。緊張している。しかしその男は表情を崩さなかった。
「そうでしたか、花束をお預かりしてもよろしいですか?」
「どうぞ、これで良かったですか?」
「はい、と言うより、花なら何でもいいのですよ」
「やはり、あれですか。俳優のAさんの影
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