海/葉leaf
 
焼き付けられている。まっすぐ伸びた巨大な通路が海の記憶をつらぬいていて、人の中の人は光を投げ出しながらそこを馳突してゆく。海流を止めるには粒性が足りない。理性を焼き尽くすには窓が足りない。光は蠕動し、海面はいのちの色に染まる。人のかなしみの波紋が、魚のうすい肌を大気のように刺してゆく。

魚は魚となるためにいくつもの恒星を包み込んできた。はじめに尾びれがあり、尾びれを浮き立たせた平面には、魚の本質が、鎔けた鉄のように流動していた。小さな名前が海面から降ってきては、ひれを認知して砕けていった。尾びれをめぐって、眼球の凍えた香りが散らされていたが、香りは水の繊維にからめとられて、はりつめた球体へと
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