ある旅立ち/MOJO
 
込まれたネリオを羨んだ。ネリオも退屈な日常に彩りがついたと喜んだ。しかしママのアケミは覚めた目でそれらの光景を眺めていた。

 ジルが初めて現われてから数ヶ月経ったある夜。ネリオは椅子に足を組んで座りギターを爪弾いていた。客はネリオひとりで、アケミはお通しの材料を切らして近所のコンビニに買いだしに行っている。
「なあジル、妖精ってやっぱりみんな女なのかい?」
 ジルは植物の蔓で編みこまれたコースターを座布団代わりにカウンターに座っている。
「ネリオ、それ、よくある偏見だから。ギタリストが全員男なわけではないでしょう?」
「そりゃそうだが、かっこいい女のギター弾きは何人かいるけど、男の妖
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