ある旅立ち/MOJO
 

 ネリオもアケミのあとを受けた。
「なるほど、修行中の妖精ね。いや、おれも無神経だったかもね。考えたら妖精と知り合えるなんて滅多にないことだもんな。おれネリオ、練馬区で育ったからネリオ。よろしくね」
 ネリオは右手の人差し指をジルにさしだした。ジルの小さな掌がネリオの指先に触れた。ネリオは針葉樹の葉に触れたような気がした。指先がちくりと疼いた。

 以来、ジルはそのバーに頻繁に現われるようにった。しかしそれはネリオのグラスの氷が崩れてからんと鳴ったときに限られていた。
 ジルは陽気な妖精だった。ネリオが弾くギターに合わせてくるくると踊り、鈴が鳴るように歌った。他の客たちは妖精に見込ま
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