ある旅立ち/MOJO
こめた。たばこの煙よりも密度が濃いその霧が晴れると、カウンターの淵に小さな人が座っている。どれくらい小さいかというと、背丈はポケットウイスキーのボトルくらいである。
「おや、ようこそいらしゃいました」
カウンターの内側で、アケミが芝居の科白のように抑揚をつけて言った。
「何なの、この人?」
ネリオがアケミに尋ねると、小さな人はぷいと横を向きカウンターの淵から下に伸びた膝から下をぶらぶらさせている。
「妖精。でもこの人は初めてだわ」
アケミは小さな人に向かって小首を傾け、表情をつくるともう一度「ようこそ」と言った。
「へえ、ジーンズにトレーナー姿の妖精か。羽もついてないし。こうい
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