ある旅立ち/MOJO
ゃないのよ。こっちには訪れるだけ。私たちと交流を持った人たちがその経験を本にしたり映画にしたりするだけなの」
「そういうものか。しかし河童がジルの仲間とはね。もしかすると鬼太郎とか目玉親父とかもそうなのかい?」
「そう考えていいわね。この世の者でない者。異形の者はすべて妖精」
すべて妖精、とジルは歌うように言った。
「おれ、ジルはケルトの森からやって来るのかとばっかり思っていたよ。ジルに喜んでもらいたくて、アイルランド民謡を何曲か練習してるんだぜ」
ネリオはケルト起源の軽快なダンスチューンを弾いてみせた。ジルはそれを上手だと言って褒めた。しかしその表情はどこか戸惑っているようでもあっ
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