ハウス/石川和広
 

いとなみはそうやって始まる

いとなみはまた森とは別の
たくさんの その時々の生育と死をはらんでおり
いつまでもなれぬまま
足元は覚束ないまま
まるでもう一度初めて生まれたみたいだった

今も覚束ない

始まっていても飼われるのが好きなわたしでも
もう一度生まれたのだから
おそるおそる胸に水をかけるように
そして手を動かすようにして周りのものの
匂いから覚えていかねばならない

銀色の魂がほしい
月を見てそう思った
感じたまま匂いを口にすれば飼い主を泣かせる
だからそうっと鳴かなければならない

耳がつつぬけになって
それを脱脂綿でふさがれた


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