太一の成人式/MOJO
ぞ這いだしてきた。
「太一、成人おめでとう」
「?」
「むかしは身体が弱かったけど、最近は病気しなくなって良かったじゃないか」
「!」
「なんだよ、忘れちゃったの? 昔はよくこうして話しをしたんだよ?」
「え? そうだったけか?」
太一はおかしな夢を見ているとは思ったが、不快ではなかった。幼いころは確かに現実と夢想との境目がはっきりしなかった。病臥したベッドはアラビアンナイトの魔法の絨毯になったし、ベッドから見上げる天井の木目は動物や怪獣の輪郭に変化した。
「太一、意地っ張りなところは直そうよ」
猫はしげるのことを言っているのだった。
太一は少ない友人のなかで、しげるを最
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