太一の成人式/MOJO
を最も慕っていた。だから太一がいじめられると急によそよそしい態度をとったしげるを当初太一は恨んだ。しかし、もしも立場が逆だったとしたら、おそらく太一はしげると同じことをしていたと今は思っている。いじめに遭っている者に味方するのは実に危険なことで、自ら次の標的になりにゆくようなものなのだ。
しかしもう遅かった。せっかく和解の機会が訪れたのに、太一は顔をひきつらせながらふいにしてしまった。
「太一、お客さんが来てるぞ」
店長の中村が休憩室で煙草を吸っている太一を呼びにきた。太一が店に戻るとトンカツやエビフライの並ぶガラスケースの向こう側にしげるがはにかんだような笑顔を浮かべて立っていた
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