太一の成人式/MOJO
 
いた。
「おふくろさんに訊いてきたんだ。迷惑でなければ少し話したい」
 太一は店長に向き直り
「店長、きょうは俺、どうしても早退したいんですけど」
 中村はニヤリと笑い
「よし、その代わり明日は早番だからな」

 その夜、太一はまたしても酩酊して日付の変わりそうな時刻に帰宅した。鍵は使わずに呼び鈴を押した。玄関扉を開けた母親が言った。
「昼間、しげるくんが訪ねて来てくれたのよ」
「ああ、いままでいっしょだったんだ」
 猫が欠伸をしながら居間からでてきた。太一はダウンジャケットのポケットから居酒屋で余ったイカゲソを詰めてもらったビニール袋をだして猫の鼻先にぶら下げた。
 猫は鼻をひくひく動かしてその匂いをかいだ。


                  <了>
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