太一の成人式/MOJO
 
まった。

 太一は幼いころ身体が弱かった。医師からは小児喘息と診断されていた。小学二年のとき、微熱が下がらず、正月空けからの学期をまるまる休んでしまった。時おり発作を起こして病院に運び込まれた。喘息の発作は実に理不尽なものだった。呼吸のための管である気管支の粘膜が腫れ、酸素が取り込み難い。息をする度に狭まった気管支からひゅんひゅんと笛を吹くような音がした。
 ある日、母方の祖母が病弱で滅多に外で遊べない太一を不憫に思い、近所で生まれた仔猫を貰って持ってきた。太一が祖母から仔猫を抱き取ると、柔らかな感触と温かみが太一の両腕に伝わり、その小動物の意外な重みは、太一の心を慰めた。仔猫は太一によく
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