太一の成人式/MOJO
 
がろうとすると、居間の扉が開き母親が顔を出した。
「遅くなるなら電話くらいはしなさいよ」
 太一は母親の険のある声を背中で聴きながら「ああ」と生返事を返し、階段を小走りで上がってゆく。
 暖房で部屋が暖まったころ、扉の外で猫が鳴いたので開けてやった。猫はベッドに座る太一の足もとに身体を摺り寄せしきりに鳴いている。
「おい、どうしたんだ?」
 太一は猫を抱き取り目の高さまで上げて顔を近づけた。猫の瞳に太一の顔が映るほど近づけても猫は鳴いている。
 太一はベッドにあお向けの姿勢で横になり猫を胸のうえにのせた。猫は思いだしたように時おり鳴いたが、酒に酔っていた太一はその状態のまま眠ってしまっ
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