太一の成人式/MOJO
ッケの干物やジャーマンポテトや粗引きソーセージを盛り合わせたものなどが運ばれ、太一の手には生ビールのジョッキが握られている。あまり酒に強くない中村は最初のジョッキが空になると、既に酔いがまわったのか、記念品のラッピングを剥がしそれを目の前にかざして満足気な様子だ。中村には妙なものを収集する趣味がある。太一には、表紙が銀色に装丁され、<成人式記念、某区>のロゴが入ったこの国語辞典のどこに魅力があるのかさっぱり分らなかったが、とにかくそれは欲しい者の手に渡り、そのおかげで太一は酒を飲んでいる。
日付が変わるころ、太一は帰宅した。鍵を使って玄関扉を開け、居間には寄らずに二階の自室に上がろ
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