珈琲屋のはなし/たちばなまこと
 
プーンの意匠が変に古くって、店に合っていない。時々ミルクポットの店があるけれど、後で入れようと思ったのに黙って下げられ、他の客に回されたりした。私は煙草を吸わないけれど、灰皿の置き方一つで店の知性が見える。何処にあるかわからないスピーカーからは嫌いじゃないけれどスタンダードジャズやクラッシック。誰が入ってきても選曲は変わらない。
カウンターの向こうに伝票やファイルが見える。裏側など客に見せてはいけない。せっかくの現実逃避が台無しだ。本棚には生活紙と週刊誌と新聞しかない。手ぶらで来ると非常に困る。仕方がないから今時の若者らしく携帯と対話したくなる。サイドメニューにパフェやパスタ。珈琲を淹れる時間が
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