珈琲屋のはなし/たちばなまこと
 
間が短縮されてしまうような気がする。どうせデミタス以外は淹れ置きだ。店に珈琲とニンニクの匂いが漂うと何をしに来たっけな、と首をかしげてしまう。

私の住むこの街には確かにあまり学生も居ないし、アーティストも居ないし、いかしたうさんくさい中高年も見かけない。足を伸ばして国立や吉祥寺なんかに行けばどこかいい珈琲屋が見つかるだろうが、そこまでして…とも思う。もっと気軽に日常の現実逃避がしたいのに。渋谷や新宿や銀座なんかのカフェにも入ったけれど、ゆっくりできやしない。かろうじて代官山ならいいかな。でも雰囲気ばっかり良くっても珈琲自体がおいしいところは見つけていない。いや、この街も探せば見つかるかもしれない。
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