珈琲屋のはなし/たちばなまこと
な癖のないミルクは最後の一口にたっぷり注ぐ。ミルクが珈琲のまろやかさを引き立ててくれるのだ。
こちらに引っ越してからはまだ、恋人のような珈琲屋には出会えない。ここはどうだろう、と入った珈琲屋をなめ回すように見渡す。入り口のマットはダスキン?つまんない色。電気スタンドにほんのりほこり。ドライフラワーにもほこり。テーブルも、その置かれている間隔も、狭くて椅子をひくと後ろの人にぶつかってしまう。メーカーのロゴ入りスティックシュガーとポーションミルク。どうせ使わないけれど、入れた後にはゴミがテーブルに残って見苦しくなる。ステンレスのトレーに載ったカップはどれも同じ。取っての付け根に茶色の浸み。スプー
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