珈琲屋のはなし/たちばなまこと
 
の宝石みたいにちかちか散っては光る。おいしい珈琲の証拠なのだ。珈琲の父親である彼は見ている。一口含んで口の中で転がすと鼻に抜けてゆくセピア。「おいしい。」言葉はそれだけでいい。「表情でおいしさはわかるのさ。」と言う店長。ウェッジウッドのカップを少し傾けて戻すと内側にセピアの名残がゆるやかにすべる。良い磁器だからこうなると、教えてもらった。そうして一口目を喉に流した後、でかいスピーカーから聞こえる音に再び耳を傾ける。時間、天気、店長の気分、客層、店の来客数で選曲が変わる。モダンジャズ、ロック、ブルース、カントリー、アイリッシュ…いくつここでアーティストを教えてもらっただろう。
動物性脂肪の余計な癖
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