小詩集「書置き」(八十一〜九十)/たもつ
 
に言っていたのに
辞書のように
いつまでも疲れていた

+

削除キーの裏側には
ジャムが塗られていた
いちごのジャムだった
ジャムの中には
僕らの家があった
家の窓は外に向かって
開け放たれていた
家の外には
いちごを煮る匂いの
風が吹いていた
それがいったい何であるのか
のような雲が空にはあって
二人が何度いなくなっても
ずっとこのままで良かった

+

メニューにあった自分の
名前を注文する
似ても似つかない
ハンバーグが出てくる
隣の席では
近所のオランダ人が凄い剣幕で
ウェイターに何かまくし立ててる
オランダの言葉はわからないが
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