小詩集「書置き」(八十一〜九十)/たもつ
 
いが
多分彼も泣きたいのだ

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友達がランドセルを背負っていた頃
僕だけが甲羅を背負っていた
ランドセルからは教科書やノートが出てきたが
甲羅には手足を引っ込めることしかできない
いっそのこと亀だったら良かったのに
そう言うと親友は
亀はみんなそう言うんだよ
と笑った

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テーブルの上には
きれいに揃えられた
一足のスリッパと
家族に宛てた白い封筒
また父が
飛び降りたのだ




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