小詩集「書置き」(八十一〜九十)/たもつ
だから
電話をすれば良いのかもしれないが
電話をするべき相手もいないし
電話をしたい相手もいない
知らないところにとんでもない
間違い電話をかけてしまった感じがする
何かを確かめようにも
その電話ボックスには電話が無いので
きみはただいることしかできない
+
朝、棚の上で
人形が倒れていた
昨晩小さな地震があった
ふと目が覚めて
気にも留めなかったが
人形が倒れるには
それで充分だった
家の者が起きてくる前に
もとにもどしておくと
地震のことには
誰も触れなかった
+
いとこが辞書のように
眠っている
言葉などいらない
とあんなに言
[次のページ]
戻る 編 削 Point(21)