終わりのない唄 -the reverse side-(novel) /とうどうせいら
 
……もっと近くに住んでたら、一緒に乗って、ぶん殴ってやるさ……。

はぁ。遠いなぁ。いっろーんな意味で遠い。自分の身は自分で守らなくっちゃあ。
そう思った。

「なぁ、最近は会ってないの?」
ある日の休憩時間。喫煙室で会社の先輩がそう言ってきた。
「誰ですか?」
「遠距離の彼氏だよ」
「電話してますよ、メールも」
「デートは?」
先輩がタバコの灰を落とすのを見る。そろそろ灰皿、洗わなくちゃ。
「……会ったのは4ヶ月前です」
「それはぁ、ダメだよ」
紫煙をフーッと天井に吹き、先輩はニヤッと笑う。
「痴漢の話にそんな淡々とした反応しかしないのはちょっとヤバいんじゃない」
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