長い長い町の話/うめバア
 
その町の、かつての軍用地は
日本がアメリカとの戦争に負けた後
大きな時計メーカ−の工場になった

高度経済成長が過ぎ去り
第二次ベビーブームの波にのり
郊外に庭付き一戸建てを求める
サラリーマンが増えて
静かな田舎町は
ニュータウンと呼ばれ
にわかに活気づいた

平日には建設用資材を運ぶトラックが、
日曜にはマイカー族が、
かつて農道だった一車線を走り、ひしめいた

その町が、町から市になった年
時計メーカ−は市民全員に
市のシンボルマークが彫りこまれた
デジタル時計を配った

工場はきっと
フル稼働だったに違いない
なにせ3万を越える町の
全住人に
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