わが原風景/岡部淳太郎
まれて立っていた。そんなことが、何度もあったらしい。後で親から聞かされた話と自分の記憶が混淆して、多少事実とは違ったものになっているかもしれない。だが、僕の中では、ひとり街をさまよい、れんげ畑の中に佇んでいたという記憶が、根強く頭の中にこびりついている。れんげ草といえば、春に紫色の花を咲かせるごくありふれた花であり、これが原風景になっているということは、詩人の原風景としては多少面白みに欠けるものであるかもしれない。それでも、僕はこの原風景に影響を受けて、それを出発点として、詩を書いてきたようなところがある。三つ子の魂百までもというが、いまだに僕にはひとりで街中をさまよう癖があるし、れんげ草が咲いて
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